そもそも”高齢者歯科”とは?

社会環境

第1回目は”高齢者歯科とはどんな分野なのか?”というお話です。

結論から先に言うと以下の項目に対処する分野です。

  1. 加齢変化に対応する
  2. 病気があったり、要介護状態の方に安全に歯科医療を提供する
  3. 時には人生の最期を看取る場面にも遭遇する

1.加齢変化に対応する

現在、日本では高齢者人口が増加し続けており、高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)は1970年に7.1%だったものが、2017年には27.3%となっています。これだけでも高齢者に対する歯科医療が望まれている背景が何となくわかりますよね?さらに厚労省の発表では、総人口の減少も相まって、2065年には38%くらいまで達するとの推計も出ています。

人間、歳をとればいろいろな変化が生じます。足腰が弱くなったり、内臓が弱くなって食が細くなったりなどです。加齢変化は口腔にも存在し、従来の歯科医療の治療成績にも関わってくるため、今まで通りの診療では高齢者の「噛めない」や「食べづらい」といった問題が解決できないといった課題が明らかになってきました。下の図は今後に望まれる歯科治療のあり方についてをグラフにしたものです。

引用:厚労省,歯科保健医療に関する最近の動向 https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/000742124.pdf

今までは”う蝕があれば削る”、”歯が無ければ入れ歯を作る”といった対応で無事に噛める・食べられるようになっていました。しかし、高齢者の中にはそれらの対応をしても 「噛めない」や「食べづらい」 といった問題が解決しない事例が多く存在します。これらは口腔の加齢変化や全身状態が強く影響しているからです。つまり、歯科疾患のみ対応するのではなく、口腔の加齢変化や全身状態からのアプローチも必要となってきているという事です。詳細については今後の記事にて解説していきます。

2.病気があったり、要介護状態の方に安全に歯科医療を提供する

高齢化が進むという事は、高齢者に多い疾患をもつ患者、要介護状態の高齢者も同様に増加します。

平均寿命と健康寿命の差を図にしたものを示します。平均寿命は死亡にかかる年数、健康寿命は介護が必要になるまでの年数です。こうしてみると平均寿命と健康寿命にはだいたい10年くらいの開きが存在します。日本ではこの開きをなるべく短くしようといろいろな施策が講じられています。

要介護状態の方はご病気や加齢によって生活に制限が出てしまっています。歯科治療においても若い健康な人に比べれば注意すべき点が多く存在します。ということは、歯科医療職種がご病気の知識や介護に関する知識を持ったうえで歯科医療にあたる必要があるわけです。

また、そもそも歯科医院まで通院が出来ない問題もあり、歯科医療から遠ざかってしまうケースも多いのが現状です。これに関しては訪問診療で対応しているとはいえ、未だにカバーしきれていないのが現状です。

3.時には人生の最期を看取る場面にも遭遇する

高齢者歯科では人生の最期に近い方も対象とします。そのような方にとってはむし歯を治す、入れ歯を作るという事ではなく、口腔を通して人生の最期を安楽に過ごすお手伝いをするという事が主目的となります。これを考えるにあたっては、その人の死生観や苦痛などをよく理解し、何が望まれているかを検討していかなければなりません。患者に寄り添う医療を最も考えなければならない部分かもしれません。

以上、高齢者歯科とはどんな分野なのかの解説でした。

今後、ブログにて詳細を解説していきますので、そちらも併せてチェックしてみてください。

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