全身状態の把握~呼吸~

患者本人と取り巻く環境の把握

呼吸は酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が正常に出来ているかどうかを確認するための大切な指標です。評価のポイントとしては呼吸の回数や深さ、呼吸時の音、パターン、酸素飽和度などを確認します。正常値は呼吸数が12~18回/分、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)が95%以上です。


歯科ではSpO2が良く用いられます。SpO2はパルスオキシメーターという機械で計測します。下に指先装着型のパルスオキシメーターと酸素飽和度を計測する仕組みについて図を載せます。パルスオキシメーター測定時ではマニキュアやネイル、爪の内出血など光を妨げるものがある場合や指先の血流が不足している場合には正確な測定ができないので注意が必要です。

パルスオキシメーター 説明

呼吸のパターンも重要な診察ポイントです。高齢者の診療上重要なものには以下のものがあります。

①チェーン・ストークス呼吸
弱い呼吸が次第に強く大きな呼吸となり、また次第に弱くなり、無呼吸(数十秒から数分間)となるサイクルを繰り返すもので、大脳が広範囲に障害されたときにみられます。
②過呼吸(過換気)
精神的なストレスがきっかけで呼吸が浅く速くなって上手く空気を吐けない状態に陥った状態。体内の二酸化炭素が減少、手足や舌のしびれを伴う事も多い。歯科診療時のストレスでも起こりうるため注意。
③起坐呼吸
心不全や肺水腫でみられる呼吸で、臥位(寝た状態)だと苦しいため患者自ら座位で努力性(一生懸命に)の呼吸をしている状態。
④死戦期呼吸(あえぎ呼吸、下顎呼吸、鼻翼呼吸)
文字通り死が近い状態にみられる呼吸で、呼吸筋が充分に機能しないがために下顎を動かして努力性に呼吸をしている状態。

呼吸音は医科では胸部の聴診がメインですが、摂食嚥下リハビリテーションや歯科の分野では頸部での聴診も重要になってきます。咽頭部の痰や唾液の貯留、誤嚥の有無を確認する際に頸部聴診は非常に有用です。聴診器を喉頭隆起の斜め下(輪状軟骨直下気管外側上皮膚面)に当てて聴診をおこないます。頸部聴診は嚥下前後の呼吸音を比較し、嚥下後に呼吸音が変化していた場合は、何らかの異変が生じていると判断します。具体的には、うがいをするようなガラガラした音(嗽音)や液体の振動音、湿ったような音(湿性音)が聞かれた場合は、咽頭部に何かしらが貯留している、もしくは誤嚥が生じているとされています。

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