口腔機能低下症

加齢変化

口腔機能低下症は「咀嚼」「嚥下」「構音」「唾液」「感覚」といった口腔機能が加齢に伴って複合的に低下してくる症状のことです。これを放置しておくと咀嚼障害や摂食嚥下障害となり、さらに全身的な健康を損なうと言われています。この文章だけ読むと、前回説明したオーラルフレイルと大変似ていると感じたと思います。実際、オーラルフレイルと口腔機能低下症はその概念や診断において重なる部分も多く、老年歯科医学会の説明でも「区別するものではない」としています。それでは、なぜ似たような言葉で二つの概念を作ったのでしょうか?
それはそれぞれの言葉を届けたい人が異なるという理由があります。オーラルフレイルは国民の口腔の健康維持・向上の啓発の目的で作られた概念です。いわばポピュレーションストラテジー(集団戦略)であり、予防医学の考え方です。一方で口腔機能低下症は、歯科医院で診断される疾患名であり、ハイリスクストラテジー(高リスク戦略)の考え方です。それぞれ口腔の健康から健康寿命の延伸に寄与しようとする目的は同じですが、関わり方が異なるのがポイントです。

口腔機能低下症の診断基準は以下の7項目があります。検査値から口腔機能低下症を判断させ、対策を答えさせる問題は歯科医師国家試験ではもう既出となっており、歯科衛生士国家試験でも出題される可能性は十分にあるかと思いますので、しっかりと覚えるようにしましょう。

検査項目

1.口腔衛生状態不良:TCIで50%以上
2.口腔乾燥:口腔粘膜湿潤度が27未満 or サクソンテストで2g/2分以下
3.咬合力低下:咬合力プレスケールで200N未満 or プレスケールⅡで500N未満 or 残存歯数20本未満
4.舌口唇運動機能低下:オーラルディアドコキネシスで「パ」、「タ」、「カ」いずれか一つでも6回/秒未満
5.低舌圧:舌圧検査にて30kpa未満
6.咀嚼機能低下:咀嚼力検査(グルコース溶出量)が100mg/dl未満 or 咀嚼能率スコア法でスコア2以下
7.嚥下機能低下:EAT-10にて3点以上 or 聖隷式嚥下質問紙でAが1項目以上

この7項目中3項目以上に該当する場合に口腔機能低下症と診断されます。

皆さんが歯科衛生士国家試験に合格し、歯科衛生士として活躍する際には、この口腔機能低下症について指導する場面も多くあると思います。卒後にも使える知識として、今のうちにしっかりと覚えるようにしましょう!口腔機能低下症をもっと詳しく知りたい場合は、老年歯科医学会から説明用資料が出ていますので、検査の詳細などはそちらを参照してください。

老年歯科医学会 口腔機能低下症 説明用資料

oralfunctiondeterioration_document.pdf (gerodontology.jp)

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