心疾患

全身疾患への対応

A.虚血性心疾患
虚血性心疾患には狭心症と心筋梗塞があります。狭心症は心臓に栄養と酸素を供給している冠動脈の血流が妨げられることによって心臓に酸素が行き渡らなくなり、一過性または可逆性に胸痛・胸部違和感などが生じる疾患です。心筋梗塞は冠動脈が閉塞し血行が途絶えることで心筋が壊死する疾患で、胸痛や胸部圧迫感が持続します。歯科治療では以下の項目に注意しましょう。

①発作(胸痛・息切れ)
処置中に発作が生じた場合はバイタルの確認やAEDの準備、心肺蘇生、救急搬送など検討する
②服薬の確認
狭心症ではニトログリセリンを発作時に舌下投与する
③発症時期
急性心筋梗塞発症後6か月間は積極的な治療はNG
だが、口腔ケアやブラッシング指導などは積極的に必要
④ストレスの緩和
疼痛や緊張などストレスによる発作の誘発を避ける

B.心臓弁膜症・感染性心内膜炎・心筋症
心臓弁膜症は心臓内部にある血液の逆流を防ぐ弁が機能不全を起こし、弁の開閉が障害され、心臓のポンプ機能が上手く働かなくなる疾患です。
感染性心内膜炎は心臓内部の心内膜や弁膜に細菌感染が生じ、疣腫(いぼ状の感染巣)を形成し、弁破壊や敗血症、血管塞栓が生じる。突然の高熱や心拍数の上昇、疲労、急速で広範囲にわたる心臓弁の破壊がみられます。
心筋症は心臓の筋肉に異常が生じ、心臓のポンプ機能が上手く働かなくなる状態です。

心臓弁膜症・感染性心内膜炎・心筋症の既往がある患者では、歯科治療が誘因となり感染性心内膜炎が生じるリスクが高いです。そのため、抜歯やSRP、感染根管治療など出血を伴う処置を行う際には抗生物質の使用をおこないリスクの回避をおこなう。また、歯磨きによる出血でも口腔内から血管へと細菌が移行するため、それらを予防するためにもプラークコントロールは重要です。

C.心不全
心不全は心臓のポンプ機能が低下し、心拍出量の低下や末梢循環不全、肺や体静脈系のうっ血を来す病態です。心不全は心臓の機能低下を表す用語で、その原因は様々です。今まで説明してきた不整脈や心筋梗塞、弁膜症、心筋症などが原因として挙げられます。したがって、どの心疾患でも心臓の機能をしっかりと把握しておく必要があります。心臓の機能の指標としてはNYHA心機能分類が有名です。

Ⅰ度心疾患はあるが普通の身体活動では症状が無い
Ⅱ度普通の身体活動(坂道や階段をのぼる)で症状がある
Ⅲ度普通以下の身体活動(平地を歩く)でも症状がある
Ⅳ度安静にしていても心不全の症状や狭心痛がある
NYHA心機能分類

NYHAでⅡ度以下であればモニタリング下の歯科治療は可能と言われていますが、緊張や疼痛、アドレナリン添加局所麻酔薬によって心不全の増悪を生じることもあるので、医師と連携をとり治療計画を決定することが重要です。

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