生活機能の評価

患者本人と取り巻く環境の把握

われわれ医療者が患者さんと相対する時、その人の状況の詳細を聴取し、患者さんの抱える問題に関係する項目についてまとめるという作業をおこないます。これがプロブレムリストです。
プロブレムリストはその人の問題点の抽出と介入する優先度が可視化されるため、多職種との連携にも有用です。今回からは病気のある方やご高齢の方、介護が必要な方に関わる情報収集に役立つ指標を紹介していきます。まずはその人がどの程度自立した生活を送れているかの指標である”生活機能”についてです。

生活機能評価の指標は多く存在します。以下に思いつく限りをリストアップしました。

要介護度(要介護状態区分)
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)
認知症高齢者の日常生活自立度
ADLの評価(IADL、BADL)
口腔関連の自立度

1.要介護度(要介護状態区分)

介護保険制度に則って、介護の必要度に応じて決定されるものが要介護度です。以前の記事で解説しましたが、コンピュータによる一次判定と介護認定審査会での二次判定によって決定されます。これに大きく関係してくるのは”要介護認定等基準時間”、つまり「介護にかかる時間の推計」です。これを参考に要介護度が決定されため、要介護度が高い者は必然的に生活への介助が多く必要な者と判断することができます。

要支援1要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態
要支援2
要介護1
要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護2要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護3要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護4要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態
要介護5要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態

2.障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)
4段階評価の指標。本人の能力(~できる)ではなく、状態(~している)に重きを置いた評価方法です。要介護判定の資料に用いられることも多いです。

生活自立

ランクJ:何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する

  1. 交通機関等を利用して外出する
  2. 隣近所へなら外出する

準寝たきり

ランクA:屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない

  1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
  2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている

寝たきり

ランクB:屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であ
るが、座位を保つ

  1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
  2. 介助により車いすに移乗する

ランクC:1 日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する

  1. 自力で寝返りをうつ
  2. 自力では寝返りもうてない

3.認知症高齢者の日常生活自立度
5段階評価の指標。要介護判定の資料に用いられることも多いです。全文は複雑なので簡単な覚え方を以下に示します。

Ⅰ 認知症だけどほぼ自立
Ⅱ 生活上の支障が多少あるが誰かが注意していれば自立できる 
  a 家庭外でも可 b家庭内なら可
Ⅲ 生活上の支障が時々あり、介護が必要
  a 日中中心に支障あり b 夜間を中心に支障あり
Ⅳ 生活上の支障が頻繁にあり常に介護が必要
M 著しい症状や問題行動があり、専門的医療を必要とする

4.ADLの評価(IADL、BADL)
日常生活動作(Activities of Daily Living)の略称がADLです。
ADLはさらに基本的な動作であるBasic ADL(BADL)と手段的なものであるInstrumental ADL(IADL)があります。
BADLの評価指標にはBarthel IndexFIM日常生活機能評価表があります。Barthel Indexは歩行や移乗、整容など動作的なことのみの評価ですが、FIMや日常生活機能表では記憶や意思の伝達などの認知機能(高次脳機能)的な部分も評価対象になりますので、併せて覚えるようにしましょう。

IADLは老研式活動能力指標(TMIG-IC)が有名です。これは、交通機関を使って目的地に行けるかやお金の管理ができるかといった社会生活を営むうえで重要な動作について評価をおこないます。

5.口腔関連の自立度

口腔関連の自立度で最も有名な指標にBDR指標があります。Bはブラッシング、Dは義歯の管理、Rはリンシング(ブクブクうがい)を示しており、それらが自立しているか・一部介助が必要か・全介助かの3段階でそれぞれ評価をおこないます。

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