老化の新トレンド”フレイル”

加齢変化

加齢は誰しもに起きる現象です。歳を重ねるごとに人の肉体・精神には様々な変化が起こり、その人のライフスタイルは変化していきます。私も多くのご高齢の方を見てきましたが、非常に多様な歳の取り方があるものだと驚くこともしばしばです。90歳を超えても元気に仕事や趣味などの社会参加をしている方もいれば、75歳くらいで介護が必要になってしまう方もいます。歳の取り方は平等ではないのです。最近ではこの”老化の個人差”が健康寿命に大きく影響しているとする考えが主流となってきました。それが「フレイル」です。もともとは”Frailty(虚弱)”という英語が語源ですが、日本国民への周知のためキャッチ―な語感として、かつ英語の意味に囚われない様にとフレイルが採用されました。

フレイルとは「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」と定義されます。つまり、①加齢や慢性疾患によって肉体・精神・社会的ともに弱っており多面的)、②それらが弱ることでその人の生活する機能が低下し、健康な状態よりも介護状態に近づいた状態であるが中間の時期)、③適切な介入によって元に戻せる状態可逆的)のことです。フレイルを説明する際にはこの3つのキーワードが重要となってきます。フレイルは介護原因に深く関係する因子として着目されています。介護原因の第3位には「高齢による衰弱」が、第4位に骨折・転倒が挙げられており、これらは背景にはフレイルがあるとされています。

ここでフレイルを説明する際に重要となる図の一つを示します。この図は加齢によって生活機能が低下する過程を説明しています。今後はこの図を使った国家試験問題も出てくることが予想されますので、しっかりと頭に入れるようにしましょう。

もう一つ、フレイルを語るうえで重要な図があります。それが「フレイルサイクル」です。これはフレイルを増悪させるプロセスを図解したものです。フレイルの増悪をどこで食い止めるか、この図を基に介入の戦略を立てるのにも役立ちます。図中のサルコペニアについては別項目で解説します。

引用:Fried L.P et al; Frailty in Older Adults Evidence for a Phenotype. J Gerontology, 56: M146-157 2001

フレイルの評価基準は多くありますが、Friedが提唱したものが最も有名かもしれません。それによるとフレイルは以下の項目で評価されます。

体重減少
主観的な疲れやすさ
歩行速度
握力の低下
身体活動量の低下

さて、ここまでフレイルの説明をしてきましたが、我々歯科医療職種がこのフレイルとどう関わってくるのか?その解説は別項目にて解説予定ですのでお楽しみに!


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